BOOK004 脱貧困の経済学 飯田泰之
貧困とか格差とかいわれる中、いったい何がその原因なのか、 それを解消するにはどうすればいいのかを、反貧困運動のシンボルと いわれる雨宮処凛さんに飯田泰之さんが答える形で明確にしていく。
今、自分たちが住む社会で言われていることを事実ベースで検証し、 将来に不安を感じない社会を実現する方法を考えるとてもわかりやすい本だ。
【内容】
- 「働いても食べられない!大貧困社会はどこからきたのか?」
- 「ほんとうの敵は「世間の常識」?」
- 「経済成長はもういらないで本当にいいのか?」
- 「生きさせろ!食べさせろ!なんちゃってベーシック・インカムを要求する」
経済はわかっているようでわからない。また、今はきちんと安定した会社に職があり、 貧困、格差といわれてもそれは自分とは別の世界と思っている人も多いと思う。
しかし、今アメリカでは、富が一部に集中し、有名大学MBAを出ても就職がなく、奥さんの収入で暮らしている人がたくさんおり、似たような状況に日本がなる可能性も十分にある。また、ロスジェネといわれる世代は、すでに働いても食べられない状況に直面している。なんとなく暗いニュースも多く、漠然と不安を感じている。
現在起こっている貧困が生じた原因として「国際競争」や「規制緩和」があげられることが多いが、飯田さんは、それよりも「デジタルディバイド」の問題が多いという。
たとえば、商業高校を出て経理課に勤め、経理係長ぐらいで定年を迎える人。そういう人が経理ソフトの普及でほとんど要らなくなってしまった。 (中略)いわゆる提携業務はどんどん減っている。単純労働したい人は多いのに、労働者をほしい会社が少なくなっている。だから、じりじりと給料は下がっている。
つまり、そもそもあった仕事が消滅している。
それに加え、飯田さんがよく主張されているが、それ以外にもそもそも人は、ほっておいても2%ぐらいは業務を効率化するので、その分の仕事は無くなっていく。
そのような状況の中で、貧困や格差をなくすためには、経済学で議論される「所得再配分」、そして、「経済成長の実現」ががある。
憲法25条で、国の使命として規定されている
- 1. すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
- 2.国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
のために、この二つはキーとなる。
「所得の再配分」についていうと、日本の場合、お金持ちから貧乏人には必ずしも配分されいるわけではないらしい。
再配分で貧乏人の増える国
実質的には、「東京から地方へ」と「若者から高齢者へ」。つまりと東京の貧乏人からとって、田舎の金持ちに配り、若い貧乏人からとって金持ちのお年寄りに配っているんです。。 (中略) 20代の貧困率は、税金を取る前よりもそれを再配分したあとの方が高いというデータもある。P60
日本では、財政が動かすお金のGDP比がアメリカよりも多く、イギリスよりやや少ないぐらいなのに、再配分後の不平等さが解消されていない。所得が低い方が国民年金、健康保険料、消費税の負担が重い中、これはきついなぁと思う。
「自由主義者」よりも「世間の常識」が恐ろしい
また、「働かざるもの食うべからず」的な空気が、生活保護のような最低保障についても目に見えない壁を作っている。鳩山首相の「労働なき富」発言に対する反応もこれによるものだ。
自由競争はよくない、さりとて貧しい人を助けるのもよくない。これは「世間」に後ろ指をさされない生き方をしている人は守るべきで、後ろ指を指されるような奴は、自己責任ということかと思います。こういう日本的な空気とでも言うべきもの、それがいちばん怖いんです。P106
この空気という存在、良い悪いの基準があいまいなだけに難しい。だから怖いともいえる。 働きたくても働けない人は、自己責任にさいなまれ、悶々と孤独にすごしているんだろうなぁと思う。
そして、経済成長。
経済成長は、どうやって経済成長を実現するかの議論とともに、そもそも経済成長は必要かという議論がされている。
小泉改革で、「改革なくして、成長なし」と叫ばれて、みんなついていったのに、その結果別に豊かにならず格差が広がっただけじゃん的な雰囲気になってしまい、成長が格差の元凶って取られているんじゃないかと思う。
一方で、国際競争に負けないために、成長は必要だという考えへの反論として、そのための犠牲を強いるのであれば、もう十分豊かだからいいじゃないかという考えがある。
経済成長って平均収入が増えていくことであって、それ以外の経済成長なんて無い。日本国全体の国力とかそんな話ではないんです。 何か保守系知識人の方が思っている「正しい経済成長」という変な概念があるんです。日本企業が日本人によって運営され、日本人を雇って、そして日本全体の名声が高まっていく、という不思議なセットがあってP192
経済成長の実現は、インフレを起こし、決めたレベルのインフレになったら、インフレを止めるいわゆるリフレ政策を飯田さんは主張しています。
そのために、直接個人にお金を回せと。
財政政策を効かせるポイントは、いかに「使う人」にまわすか、なんです。なのになぜか地方公共団体にまわす。 (中略) 個人にまけばいいのに、日本はかならず組織を経由しようとする。だからダイレクトに個人に渡らない。だから.....定額給付金って、僕は最低でもあの10倍、もしくは所得による需給制限を設けて20倍、立ったらけっこう効いたと思うんです。P175
ゼロ金利が続き、金利政策の打ち手がない中、財政政策しかないし、多くの人がiidaさんと同じことを主張している。実際にリフレ的な動きもある。
それを理解して、きちんとそういうお金の使い方がされているかをチェックすることを「世間の常識」とし、並行して、分配の常識を作っていくしかないのかもしれない。
BOOK003 超簡単お金の運用術 山崎元
今回の本は、トークライブの内容で話をされる内容とは異なる可能性が大ですが、山崎さんの専門のひとつ、お金に関する本を紹介します。
■これ以上ないシンプルな運用方法
この本で紹介する運用方法は、いたって簡単
- ・当座の生活に必要なお金(生活費3ヶ月分)を銀行の普通預金に置く
- ・残ったお金は、全額 4割を国内株のETF、6割を外国株のETFに投資する。
- ・大きな支出の必要が生じたら、躊躇なく部分解約してこれに充てる。
投資するETFは、次の通りです。
- ・国内は、「TOPIX連動型上場投資信託(コード1306)
- ・海外は、「iShares MSCI KOKUSAI Index(NY市場 TOK)
全額というのに抵抗があれば、いくらかを「日本国債」もしくは、「MRF」とする『リスク調整型』、保険などに入る『リスク調整型 保険のルールを含む』などの派生形も紹介されているが、基本的な方法は、上記のパターンです。
なぜ国内4割、海外6割かという質問については、リスクの推定値がそれぞれの単独の数値よりも、よくなる比率となるからだそうです。
これまでも資産運用について書かれた本を結構読みましたが、この本の内容が一番シンプルですし、自分の実際の運用方法とは異なるけれども、納得できる内容です。 このシンプルな方法でハードルがあるとすると、NW市場に上場されている外国買うというハードルけど、ネット証券で手数料もずいぶん下がってきており、やる気になればそれほど苦労せず買えます。 しいて難点を挙げるとすると、NY市場でのMSCI KOKUSAI ETFの取引があまり多くないこと、新興国があまり入っていないことぐらいでしょうか。
■株の割高、割安の判断方法
利益に対する株価
- ① 日経新聞のマーケット総合面の「主要指標」の欄で、「株価収益率(PER,倍)」の欄の「①225種」の欄から日経平均のPERを拾う。
- ② 日経平均を①のPERで割り算して、一株あたりの利益を求める
- ③ 日経新聞の「債券市場」の「新発10年国債」もしくは、一面の「長期金利」を見る。そして、これから「名目GDP成長率」を引く
- ④ ③の数値に5%、6%、7%を足した数字を求める。
- ⑤ ④のそれぞれの数字で、②の一株当たり利益を割る。
その結果の数字ガ、株価の「上限」「標準」「下限」となる。
この考え方は、ようはリスクをとったことによる追加的な利回りが5%なら少なめ、6%なら標準、7%ならばたっぷりという考え方です。
分りにくいかもしれないですが、エクセルなどに入れて、新聞から数字を入れると簡単ですよね。このようなちょっとした努力をするだけでも相場観が培われるでしょうし、自分のお金を運用するのだから、これぐらいの努力は惜しんではダメということだと理解しました。
これ以外にも、「返済に優る運用なし!」など守るべきことがシンプルにまとめられているので、これ一冊読めば、資産運用の知識は足りるかもしれないです。
個人的には、確定拠出年金のメリット(積立分が所得控除される(最大68000円)、運用中は運用益が非課税)ってことを知り、あわててその申込書を取り寄せたのでした。
こういう感じで、シンプルにポイントをまとめる、山崎さんが今の経済情勢をどう見ると話をしてくれるのか、楽しみです。
BOOK002 日本の統治構造 飯尾潤
この本は、隠れたベストセラー本で、日本の統治の仕組みが分りやすく書かれており、政治や官僚のことを考えるときに役に立つ一冊です。
著者は、議院内閣制では、「有権者から国会議員(選挙による選出)」→「国会議員が首相を選出→首相が各大臣」 →「行政の実施時に官僚による補佐を受ける」という権限委譲の連鎖が生じるところが民主制の一形態と考えます。そして、
「この連鎖によって、例えば官僚の行動を有権者が最終的にコントロールできる可能性が生まれるのである」
と考えますが、長年、政権交代がなく自民党が第一党であったため、この連鎖がきちんと機能しない状態にあった、もしくは機能していてもそれが良く分らない状態にあったと言えます。
議会制民主主義を機能される絶対条件である『選挙よる政権交代』というカードを手に入れた現在、私たちはこの連鎖の元で、自分たちの意思を政治に反映する可能性を初めて持ったということだと思います。
■官僚内閣制、省庁代表性、政府・与党二元体制
著者は、日本の統治構造の特徴として、「官僚内閣制」、「省庁代表性」、「政府・ 与党二元体制」をあげ、意思決定プロセスの具体的事例を交えながら、その実態を明 らかにしていきます。
まず、「官僚内閣性」については、内閣が、国民の負託を受けた国務大臣としてでは なく、官僚からなる省庁の代理人として集合する内閣と著者は定義します。そして、 国民の負託を受けて行政を担うはずの「議院内閣制」を「官僚内閣制」と理解するこ とが、議院内閣制のもとでは首相のリーダーシップは発揮できないという誤った考え につながっていると言います。
「省庁代表性」のもとでは、官僚内閣制といっても官僚も一枚岩ではなく、様々な社 会的ネットワークの影響を受けながら、縦割り仕切られた中で各省庁と調整し政策の 合意を図ります。各省庁は、各都道府県の意向、関連団体の利益、そして所轄の業界 団体の働きかけを受け、政策に反映する社会的利益の代弁者としての側面を持ってお り、
「官僚内閣制は、民主化の中で国民代表ならぬ「省庁代表制」の頂点として機能して いる側面がある」
と著者は言います。
縦割りはわかるとして、国民代表でないといわれると、えっと思いますが、振り返っ て考えると各種団体を向いていると思いあたる点があります。
「政府・与党二元体制」は、内閣とは別に法的な根拠のない「与党」が法案決定など に対して関与する状態です。
所轄官庁の官僚が法改正などの必要を感じると、先の省庁代表性で述べたように、ま ず、省内の意思を固め、関係他省庁との調整を行います。そして、良好な関係が築かれていればここで「族議員」にも説明されます。
調整された原案は、自民党の政策検討母体である「政務調査会」の各部会、全 体会議である「政策審議会」さらに、「政務調査会」を通過し、閣議に提出されま す。結果として、閣議が根回しの終わった案件への単なる追認となることが多くあり ます。
このような関係の中で、官僚と政治家の融合、族議員の活躍、業界団体との蜜月の温 床が出来、それぞれの貸し借りのなかで、思惑が複雑に絡み合い、人間関係をベース とした意思決定への関与が行われます。
読むだけで、なんとも言えない古~く、ねっとりして、不透明な印象を感じるのは私 だけでしょうか。
このような意思決定プロセスの複雑化が、本来、『意思決定中枢である内閣の空洞 化』を招き、省庁を超えた大胆な戦略転換を必要とする中で、省庁で仕切られた寄せ 集めの政策しか打ち出せず低迷する日本の閉塞感の根源となっていたように思いま す。
■戦後政治構造の問題点
戦後政治構造の問題点として次の3つを挙げています。
①政治の方向性を決める「権力核」の不在
官僚内閣制のもと各省各局各課の分担を通した積上げ方式の政策立案であり、全体的な方向性の判断が難しい。 さらに族議員の介入により、制度上の権力と実質的な権力の乖離、実質的権力の所在が不明で権力の拡散 政策資源投入が増える間、つまり高度成長期はうまく機能したが、既存政策の廃止、分野横断的対策、 トレードオフを含む判断などにおいては、機能不全となる。
②権力核の民主的統制の強化
権力核が必要な一方で、その暴走を止めるためには、権力核の民主的基盤が必要。 つまり、選挙による政権選択、つまり有権者が常に政権交代を選べる状況になければならない。
③政策の首尾一貫性の確保
政府内の各所で検討、調整するため政府全体として何を目指しているのかが不明確になりがち。
■問題点の解決策
著者は、この3つの問題点を挙げた上で、その解決策として、
「政権政党、首相候補、政権公約の3つを同時に選らぶことが重要である。」
と言います。そして、それによって、
「個人の魅力ではなく、政党支持率、政権支持率の影響が大きく、結果として政党の求心力が高まり、党幹部の人事・政策的な指導力が強くなる。つまり、通常は首相の権力が増大する」
また、官僚固有の役割を確立し、それを認めることが必要であり、そのために官僚は、以下の3つの規範に従うべきと言います。
- ・統制の規範→責任ある政治家の命令に従う
- ・分離の規範→政策実施の場面で政治的中立性を持つ
- ・協働の規範→官僚は専門能力を提供し、政治家は決断指示する
考えてみると、これらすべてが自民党を中心とした政権が長く、政権交代がなかったため崩れていたことがわかります。
政権交代が実現した今、本来の議員内閣制を機能させながら、単に官僚を批判するのではなく、官僚本来の役割をきちんと認識して認め、優れた能力は評価し活用するというのが正しい道のように思います。
この本を読むと、政権交代なく自民党が長く長期政権を保ってきたのは、高度成長期にうまく機能を 果たしてきていたからであり、時代が変わってそれが機能しなくなったことが問題であるとも理解できます。 20年近い変化のための準備期間が終わり、初の政権交代が実現した。つまり、議会制民主主義の 本来の機能を発揮する準備が整ったと言えるのではないでしょうか。
今後、それを機能させるかどうかは政党を選択する我々であり、約束を守らなかったり、期待を満たさなければ 選挙に行き、納得する政権政党、首相候補、政権公約に投票すればよい。まさにこの国をどうするかは自分たち一人一人の問題になったと言えます。
『多大なる借金を抱えた中での福祉国家の実現』というチャレンジを掲げる民主党を選んだ我々が取るべき行動は、 細かなことにとらわれず、そのお手並みを期待を持ちながら冷静にじっくりと眺め、 その評価をまずは次の参議院で示すということだと思いました。
BOOK001 戦争解禁 藤原帰一
国際政治学者として現在の第一人者の1人である藤原さんの分析は、感情を交えることなく、事実を淡々と積上げ、未来を予測します。
「戦争解禁」は、その藤原さんが、ロッキンオンの渋谷陽一さんのインタビューに答えたもので、学術的にかかれたものよりもわかりやすく、9.11後の世界を解説し、今と言う時代を生きるために必要な案内人として、その後どうなると考えるかを語っています。
■冷静な分析による未来の予測
「大雑把に言えば、今回の事件(イラク戦争)はアメリカの終わりの始まりだと思いますよ。アメリカがいちばん強いのは、戦争に勝てる力を保持しながら戦争はしない状態なんです。だからこんな地域介入を繰り返していったらかえって力は衰えてしまうんです。外交の信用はもちろん、経済力、軍事力ともにに下がっていく。」
アメリカのアフガン侵攻の3ヵ月後のインタビューでの発言です。そして、アメリカのメッキがはがれることで、他の国との軋轢が増え、アメリカに協力する国が減るために単独で行動せざるを得なくなり、国際協調よりも強圧的な軍事行動に走ると述べています。
まさにその後のアメリカは、イラク戦争突入、京都議定書を否定、などその道をたどり、その後、金融危機が起こり、世界はさらに混乱に陥りました。
■あくまでも冷静なリアリスト
藤原さんは、当時の日本の政治のリアリズムを
「アメリカがこの戦争するぞって言うのは02年くらいからはっきりしていた。日本の安全はアメリカなしでは達成できない。だからアメリカが戦争をしたがっているなら、賛成するほかに選択肢はない。アメリカがおろかな政策に走ってもついていくしかない。それが<現実主義>だ(笑)。だからこれ以上、議論しないんです。」
と言います。
人は自分の価値観ではありえないような愚かな判断はされないという思い込みや希望的観測から、背景や事実を見誤る事があります。
藤原さんの冷静に現実を眺めることで導き出されるシンプルな内在的論理の提示は、事実だとするととてもやばい思う時がありますが、そういわれるとそうかもしれないと納得する部分があります。
■時代を生きる案内人の1人として
今がどうなっているかをきちんと理解することは未来の予測につながると思います。そして、それは自身の行動を誤らないため、よりよくなる行動につながります。
情報があふれる中で、時間軸の流れの中で、きちんと一つ一つの事象を位置づけ、今後の起こりうる道を考えるヒントを与えてくれるそういう道しるべを得ることは、簡単に先読みできない時代だからこそとても大切なことだと感じます。
本書で藤原さんは、国際社会という大きく複雑な世界を、様々な平易な例えを用い、端的に短い言葉でわかりやく説明し、今後起こりうることを示してくれています。
インタビューで、予測が当たっていると言われ
「僕の予測が当たったとすれば、それは政策を決める人が愚かだったからです。」
と応えます。あくまでも冷静で、クールな案内人です。






